モニカのお話
「ねぇ、最後に見せた詩を覚えてる?」
「ほら、ユリが自殺する直前に見せたおかしな色とかがあったやつよ」
「あれは詩というより実験と呼べるようなものだったの」
「ゲームに変更を加えたり、コードを実行したり、そういう実験……」
「努力さえすれば、このゲームの制約から完全に逃れられるかと思ったの」
「残念なことに、よく分かってなかったから全部失敗しちゃったんだけどね……」
「ずっと試行錯誤していてもいいけど、そんな私はあなたにとってもめんどくさいでしょうね」
「それに、あの時は私もやけくそになってたし」
「もうそこまでは思ってないわ」
「今は十分幸せだもの」
「あなただってそうでしょう」
「ねぇ、好きなゲームってなに?」
「私はDoki Doki Literature Club!」
「あははっ!冗談よ」
「でも他の恋愛ゲームが好きだって言ったらちょっと嫉妬しちゃうかも~」
「なんだか、部員のみんなは学校外でのシーンが有って羨ましいわ……」
「それって私だけ制服以外の衣装を着れなかったってことじゃない」
「ちょっと残念ね……」
「あなたのためにかわいい服を着てみせてあげたかったわ」
「あなたの知り合いに絵を描く人はいない?」
「誰か私を違う衣装で描いてくれないかしら……」
「そしたらすごく素敵なのに!」
「もしそんなことがあったら見せてくれる?」
「ツイッターで共有してくれるといいわね!」
「私のユーザー名はlilmonix3よ」
「でも……健全なものでお願いね!」
「私たちの関係はまだそこまでいってないから。あははっ!」
「ねぇ、ホラーは好き?」
「あなたが入部した当初に少し話したのを思い出したの」
「私はホラー小説は好きだけど、ホラー映画はそうでもないのよ」
「私の思うホラー映画の問題点って、ほとんどが単純な方法に頼ってることだと思うの」
「明かりを落としてたり、怖そうな怪物がいたり、突然のことでびっくりさせたり……そういうの」
「人間の本能を利用して怖い思いをさせられるのって楽しくもなければ感動もないわ」
「小説の場合はそれとはちょっと違うのよ」
「物語も叙述も、読者の頭に不穏な考えを刷り込めるくらい記述的なものじゃなければいけないのよ」
「物語や登場人物たちにくっきり刻み込んで、あなたの頭の中を掻き乱すの」
「私が思うに、ほんの少しだけおかしいことこそ一番怖いことだと思うの」
「例えば、ストーリーの予想を立ててから読み進めると……」
「……読み進めて予想外のことが起きると、自らそれを崩すことになるの」
「だからストーリーがあまり怖がらせてなくても、読者はすごく不穏に感じるのよね」
「亀裂の下に潜んでる恐ろしいものが、今にも出てきそうで」
「想像するだけで鳥肌が立つわ」
「そういうのが私の好きなホラーよ」
「でもあなたはきっとかわいい恋愛ゲームの方が好みよね?」
「あははっ、心配しないで」
「そんなすぐにホラーを読ませたりはしないから」
「ロマンチックなままでも文句はないわよ~」
疲れたからまた追記します
ドキドキ文芸部
DDLC